低線量被ばくは本当に許容できないのか?

category:要旨
2012.12.19

低線量被ばくは本当に許容できないのか?
国際医療福祉大学クリニック
鈴木 元

 福島第一原発事故以来、国民の間には、微量の内部被ばくや低線量・低線量の遷延被ばくのリスクに対する不安が高まっている。その背景には、科学的根拠のないまま、不安をあおる人々がいる。私たちは、放射線生物学や放射線疫学のデータに基づき、内部被ばくや遷延被ばくのリスクを正しく国民に伝える必要がある。原爆被爆者の疫学データから直線閾値なし(LNT)仮説に基づき遷延被ばくによる年間数mSvの外部被ばくのがんリスクを推計すると、あったとしてもそのリスクの大きさは生涯がんリスクが10歳男児(女児)で30%(20%)が30.1%(20.1%)に増加する程度である。その増加の大きさは、肥満や野菜不足のがんリスクより一桁以上小さく、バックグラウンドのがん死亡率のばらつきに隠れてしまい、検出困難なレベルである。10mSv未満の極低線量被ばくになると、DNA損傷が生体の細胞に蓄積されるか否か、未だ結論が出ていない。肺結核患者の医療被ばく集団の調査は、週1回10mSvの被ばくを繰り返した場合、乳腺組織では被ばく影響が蓄積されるが、肺組織では蓄積されないことを示している。自然放射線レベルが高いインド・ケララ地方の約10年にわたるコホート調査結果は、年間4〜70mSvの被ばくを受けている住民であっても、放射線がんリスクがゼロであることを示している。微量の被ばくを恐れるあまり、チェルノブイリ原発事故後に堕胎やアルコール中毒や心身症が増加した苦い経験を、日本で繰り返してはならない。

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